このシリーズの第2回では、AIの歴史の初期段階を振り返り、この革新的な技術がどのように始まり、初期の挑戦と成功を経て、今日に至る基盤を築いたかを探ります。AIの歴史を理解することは、現在のAI技術の可能性と限界をより深く理解するための鍵となります。
人工知能（AI）の歴史は、20世紀半ばに遡ります。1950年代と1960年代は、この分野の探求の最初の時期とされており、AIの基本的な理論とアプローチが形成された時代です。
1950年にアラン・チューリングが提案した「チューリングテスト」は、AI研究の基礎を築く画期的な出来事でした。このテストは、コンピュータが人間と区別がつかないほどの「知的」な振る舞いを示す能力を試すもので、AIの研究の出発点となりました。
1956年には、歴史的なダートマス会議が開催されました。ここで初めて「人工知能」という用語が使われ、ジョン・マッカーシー、マービン・ミンスキー、アレン・ニューウェル、ハーバート・サイモンといったAI分野のパイオニアたちが集まり、AIが将来持つ可能性について議論しました。
この時代のAI研究は、主にシンボル処理というアプローチに焦点を当てていました。シンボル処理は、人間の思考プロセスをシンボルとして表現し、コンピュータがこれらのシンボルを操作することによって、知的行動を模倣しようとする手法です。この時期の重要な成果には、ニューウェルとサイモンによる「ロジック・セオリスト」があります。これは、数学的な証明を自動生成するプログラムで、AIの能力を示す初期の例となりました。
また、この時代には、言語理解の初期の試みがなされました。これらは現在の自然言語処理技術の前身となり、機械による言語理解と生成の基礎を築きました。例えば、ジョセフ・ワイゼンバウムが開発した「エリザ」は、初期の会話型プログラムであり、シンプルな自然言語処理の能力を示しました。
しかしながら、この時代のAI研究は、理論的な側面が主であり、実世界の複雑な問題を解決するには至りませんでした。また、当時のコンピュータの処理能力の限界も、AIの応用範囲に大きな制約を与えていました。
